阿寒町マイクログリッド事業の特徴

阿寒町マイクログリッド事業の特徴

2018年9月の北海道内ブラックアウトにより、釧路市阿寒町でも最大3日間の停電が発生し、町内の酪農家でも、乳牛の搾乳機械やバルククーラーが使用できない等の被害を受け、大きな経営的ダメージを被りました。

また、この地域は釧路空港から阿寒港などの観光地へ行く主要道路がありますが、農地への堆肥散布に伴い発生する臭気が観光へのイメージダウンに繋がることが課題となっており、その課題解決に向けて牛糞尿を嫌気性発酵させて利用するメタン発酵バイオガス発電事業への期待が高まっており、メタン発酵後の消化液の液肥効果が高いことも相まって、阿寒農業組合ではNEDO事業等を活用してメタン発酵バイオガス発電事業への知見を蓄積していました。

本事業では、そうした酪農家の非常時電源確保に対する期待、観光産業へのイメージ改善への寄与、またバイオマス産業都市に認定されている釧路市のバイオマス施策への寄与等の点で、地域課題を解決する事業であり、新たな電力システムの構築事業とは一線を画した、地域振興に資する事業となっています。

事業実施エリア

事業実施エリア

マイクログリッド対象エリア

マイクログリッド対象エリア

マイクログリッド供給エリアは、東西約4km、南北約5kmの約20km2、マイクログリッドの配電線長は約17.8km、マイクログリッド供給需要家数は、高圧酪農施設5軒、低圧酪農施設9軒、民家25軒、徹別多目的センター(釧路市指定避難所 収容人数104人)の計40施設です。

マイクログリッド構成設備

マイクログリッド構成設備

マイクログリッドの電源は、太陽光発電160kW、バイオガス発電設備166kW、需給調整用蓄電池272kW(1087kWh)となっており、すべてマイクログリッド内の大規模酪農施設である㈱天翔阿寒の敷地内にあります。

平常時

マイクログリッド内の電力は、一般送配電事業者である北海道電力ネットワーク㈱より電力供給が行われ、マイクログリッド運転は行っておりません。発電設備は㈱天翔阿寒内へオンサイトPPAにより電力供給を行っています。㈱天翔阿寒から供給される牛糞尿を活用し、オンサイトPPA以外にバイオガス発電設備49kWでFITを活用した売電事業も実施しています。

非常時

一般送配電事業者である北海道電力ネットワーク㈱と協議し、基幹系統事故のような大規模停電時にはマイクログリッドを運用します。
マイクログリッド内には高圧需要家が5軒ありますが、それぞれ動力用の非常用ディーゼル発電機を所有しているため、マイクログリッドで供給する電力は、それら高圧需要家5軒の動力以外の電灯用電力、低圧需要家35軒の電力となり、マイクログリッド内の需要電力は最大197kW、2385kWh/日を見込んでいます。マイクログリッド運用中に太陽光発電量が0kWh/日だとしても1.8日間、1日でも快晴なら3.6日間、晴れの日が続けばそれ以上の運用継続が可能となります。

マイクログリッド内の電力

設備配置図

設備配置図

マイクログリッド運用手順

マイクログリッド運用手順